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これらの規格値から設計に使用する耐力(最小値)をまとめたのが表3.35である。船体主構造材料である5083合金の最小耐力は板材(質別O)が125N/mm2(13kgf/mm2)、押出形材(質別H112)が110N/mm2(11kgf/mm2)である。5083−H32合金板の最小耐力は215N/mm2(22kgf/mm2)であるが、突合せ溶接継手の耐力は質別Oの値まで低下するので、125N/mm2を設計に用いなければならない。ただし、溶接線が計算する断面と直交する場合には、溶接による強度低下を無視できるので、高速艇に採用される理由の一つである。

 

表3.35 JIS規格における耐力の最小値

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6000系合金質別T6の突合せ溶接継手の耐力は、質別T4の最小耐力を設計の目安とすればよい。したがって、上部構造用の6061−T6合金突合せ溶接継手の耐力は、質別T4の耐力110N/mm2を用いる。6NO1合金押出形材の場合には質別T4の規格値がないので、質別T5の突合せ溶接継手の耐力120N/mm2(12kgf/mm2、代表値。19))から100N/mm2を最小耐力とみなすのが妥当である。
「高速船構造基準」は、使用する材料ごとに[J1S H 4000、H4000若しくはH4100」又は「日本海事協会鋼船規則K編」に規定された耐力の最小値を用いるので、後者の材質と機械的性質を表3.36に示す。表3.31(板材、H4000)及び表3.32(押出形材、H4100)と比較すれば分かるように、J1S規格に未制定の5456合金板及び同押出形材を除けばJlS規格値と同じであるが、5083−O合金板の厚さ100〜200mmにおける機械的性質を規定している点が異なっている。5456−H116合金板及び5456−H111合金押出形材の各数値はASTM規格*2と同じである。高速船構造基準も溶接によって低下した耐力の値を設計に用いるが、その値が溶接後の引張強さの70%以下という制限がある。また、低下した耐力の値が確認できない場合には、焼なまし材の耐力の最小値を用いるので、5456−O合金のASTM規格値を表3.37に示した。

 

 

 

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